コロナショックが株式市場にもたらした影響と、東京プロマーケットの変化

インタビュー記事

新型コロナウイルス感染症は、世界中に大きな影響を与えました。それは株式市場も例外ではありません。今回は、コロナショックが株式市場にもたらした影響と、それにともなう東京プロマーケットの変化について、フィリップ証券株式会社常務執行役員 投資銀行本部長の脇本源一氏にお話を伺いました。

コロナ後の株式市場はどうなっていく?

非常事態宣言解除後、東京プロマーケットへの問い合わせが急速に増えました。先日、日経新聞を含め複数のマスコミの取材を受けましたが、企業だけでなくマスコミの注目度も上がっています。

―上場する企業の数は、景気の指標とダイレクトに関連していると思います。そういった意味でも、マスコミは放っておけないですよね。

コロナショックの影響で、マザーズやJASDAQなどの一般市場においては、今年は上場企業数が減ることが予想されています。全体的に何かしらの影響を受けているので、現在上場準備中で今年/来年くらいに上場予定だった企業の多くが延期になる可能性があります。おそらく、その影響で東京プロマーケットへの問い合わせが増えていると思います。そのような会社は、すでに主幹事証券がついており、監査法人による監査も受けていて、まさに上場準備中の会社が多いのです。

―準備していた企業が、一般市場が厳しいから「東京プロマーケットはどうだろう」と。

これは私の勘ですが、東京プロマーケットという名前は以前から皆さん知っていた。けれど、特段関心を向けていなかったのだと思います。

ところがコロナショックで一般市場への上場が厳しくなったので東京プロマーケットという市場があることを思い出して「ちゃんと調べてみよう」という動きが出たのではないでしょうか。5月25日にLINE Japanの元社長である森川亮氏が代表取締役を務めている「C Channel」という動画メディアの会社が当社主幹事で東京プロマーケットに上場しましたが、これも話題になり、多くの方が東京プロマーケットを知るきっかけになったと思います。

―それは、マザーズやJASDAQに上場するのが厳しいと企業が自覚したということですか?

そうかもしれませんね。主幹事証券から決定的な一言を言われなくても、自ら悟ったケースもあります。(実際にそのように発言されている会社さんにもお会いしています)。コロナショックで業績が不安定になっていますから。それで「上場できる市場でまず上場しておくのが得策だ」と企業が考えて動いているように思います。これがコロナショックの影響です。

東証の市場再編の影響が出始めている?

それからもう一点、来年度から実施され、2022年4月に完全移行となる東証の市場再編の影響も出始めました。例えば、JASDAQへの上場を目指していた会社の、東京プロマーケットへの流入がはじまったのです。

市場再編の概要を簡単に説明します。こちらをご覧ください。

(出典:新市場区分の概要等について/株式会社東京証券取引所)

この再編のポイントとしては、これまで各市場に様々な基準が混在※1していましたが、新しい市場では、上場基準と廃止基準(上場維持基準)が同じ※2になりました。また市場第二部とJASDAQが合併することで、新スタンダード市場の上場基準が実質的に大きく上がることになります。

※1現在の基準は、新規上場基準、上場廃止基準、一部指定基準(市場第二部→第一部への移行)、市場変更基準(マザーズ、JQから市場第一部への移行)、指定替え基準(市場第一部→第二部へ落ちる)等の内容が全て異なっているわかりにくいものでした。

※2一部指定、市場変更、指定替え、上場廃止等の基準は全て基本的に新規上場基準と同一となります。

市場再編後を睨むと、現在JASDAQを目指している会社の多くは、新しいスタンダード市場の上場基準に到達できないことが想定され、そのような会社は、新基準に合致する規模になるまであと何年も(3年~5年程度?)上場準備を続けるか、それとも一旦あきらめるか、という選択を迫られます。

そこで、行き場を失った会社が、方向転換をして、一旦東京プロマーケットに上場して、さらに上位市場(新スタンダード市場)を目指そうという動きに繋がってきているのです。例えば売上高が数十億~数百億あっても利益があまり出ていなくて経常利益=数億円(2,3億円~5億円前後)といった安定成長型の企業がJASDAQに上場していましたが、今後はこの規模では、新スタンダード市場への上場は難しいということになり、そういう会社から話が来始めているのです。

また、東京証取引所も「東京プロマーケットを育てていこう」という意識が昔に比べだいぶ強くなってきました。東京プロマーケットは、新グロース市場、新スタンダード市場などのプレ市場と位置づけて、企業に対しても「東京プロマーケットから上がってきてはどうですか」ということを東証がはっきり言うようになってきています。

これまでは、東証としては、「そういう選択肢もありますね」というトーンでした。

東京プロマーケットの上場審査は厳しくなったのか

―先のことは分からないものの、コロナは収束しつつあるように思えます。東京プロマーケットは、コロナに関してどのようなスタンスなのでしょうか?

そこは、他の市場と変わりません。東京プロマーケットは他の市場よりも上場要件が緩いという特徴がありますが、コロナに関しては「コロナでどんな悪影響を受けていても関係ない」ということはありません。コロナの影響はあったのか、今後どのように回復していくのかというところは、一般市場と同じようにチェックします。

業績の先行きが不透明なまま強行して、上場したあとに第二波が来て当該企業が大幅な減収減益、最悪倒産ということになると市場が混乱してしまいますから。

これからの上場準備

―これから上場をするにあたっては、コロナ対策やコロナの影響を踏まえた経営計画が重要になってくるのでしょうか?

はい。そこはしっかり確認していきます。

―その場合、どの程度の対策が求められるのでしょうか。

事業にどういう影響があったのか、それに対して会社がとった対策や戦略、その結果どのように業績が回復してきているのか。例えば飲食業なら、デリバリーやテイクアウトでどれくらい補えているのか、客単価や来店客数などはどう変わったかという、実際の数字を見ます。他の業種も同じで、どの部分で影響を受けているのか、それがどのように復活してきているのかという具体的な部分を見ていきます。やはり、足元の数値がポイントです。

―今後、東京プロマーケットに上場したい企業が増えていった場合、上場の順番待ちが起きるのでしょうか?

いいえ、順番待ちではなくて選別になります。これからの東京プロマーケットに求められる企業の特徴は大きく分けて2つです。ひとつは、ある程度規模があり、安定した収益体制を持つものの、利益水準が低く、新スタンダード市場へはまだ時間がかかる企業、そしてもうひとつが、高い成長可能性はあるものの、新グロース市場へはまだ少し早いという会社です。このカテゴリーは、話題性や新規性等も重要だと思います。

例えば、仮に現在の売上水準が2,3億で利益があまり出ていない企業があったとしたら、その企業の将来の売上げが10億、20億、100億になる姿をどのように描けるかがポイントになってきます。

規模が小さくて急成長しない企業も、これまで東京プロマーケットでは上場できていました。そもそも東京プロマーケットは、そうした企業も受け入れるというコンセプトだったと思います。

しかし、今後は、(本来の東京プロマーケットのコンセプトとは異なりますが)

そのような会社の上場は難しくなっていくのではないか、そして新スタンダード市場や新グロース市場のプレマーケットとしての位置づけがより鮮明になっていくのではないかと個人的には考えています。

―そうなると、売上高2、3億の会社は、これからは東京プロマーケットでの上場は難しくなるのでしょうか?

将来の成長性可能性が見えないと難しいでしょうね。例えば、上場直前期の売上2億円、来年は2億3千万、その次の年は2億5千万というようなタイプの企業ではおそらく上場は困難です。一方で、翌年には5億、その次は10億といった成長可能性がある会社であれば上場は難しくないと思います。2020年7月末現在で、東京プロマーケットへは累計で48社が上場し、ある程度市場の形が出来上がってきましたしたし、一般市場の再編を控え、今後その位置づけがより重要になってくると思います。

これまで上場できていた会社が上場できなくなったり、逆にこれまでこの市場はきてくれなかったような大きな会社が上場してきたりと、東京プロマーケットは大きな変革期に来ていると感じています。

もし、一般市場への上場に不安をお持ちの会社、東京プロマーケット上場にご興味のある会社は、本市場における圧倒的な主幹事実績とノウハウを有する弊社にご相談ください。ご相談に際しては、下記のお問合せボタンよりお気軽にご連絡いただければと思います。

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