東証再編で、東京プロマーケットの市場価値が上がる

インタビュー記事

2022年4月、東証再編へ

―東証が市場区分を見直し(再編)するとのことですが、再編の背景にはどのような事情があるのでしょうか?

脇本:日本はバブル崩壊後、波はありましたが、全体的に見ると不景気が続きました。右肩下がりの日本経済の状況は株式市場にも影響を及ぼしました。東証一部の上場基準を引き下げたり、マザーズやJASRACから上場しやすくしたりといったことがおこなわれたわけです。

一方で、経営悪化などによって上場廃止基準に引っかかる企業を減らしたいということで、意図的に廃止基準の引き下げもおこなわれてきました。やはり、上場廃止企業が増えれば投資家が困りますから。そして、このような施策を重ねた結果、東証一部にふさわしいバリューを持たない企業が多くなってしまったのです。

また、JASDAQを吸収したいという狙いもありました。元々JASDAQは大阪証券取引所の市場でしたが、大阪証券取引所と東証が合併したことによって東証に入ってきた。ここも、どこかのタイミングで一度整理をしてしまいたかったわけです。これが、東証再編の大きな2つの背景です。

再編により、上場のハードルは大きく上がる

―今回の再編では、上場基準が厳しくなると聞いています。中でも大きな変更となるのはどの点ですか?

脇本:最大のポイントは、流通株式(※)の定義が厳しくなることです。国内の普通銀行、保険会社、事業法人などが所有する株式のほか、役員以外の特別利害関係者の所有する株式についても流通株式から除外されることになりました。

たとえば、スタンダード市場の流通株式時価総額は10億円となっていますが、経営者が全体の75%、流通株式の割合が残りの25%でこの基準を達成しようとすると、全体の時価総額として40億円が必要です。

上場時のPER(株価収益率)がだいたい10%ですから、そうすると4億円の当期純利益が必要になるわけです。

しかも、上場廃止基準も同じく10億円ですから、仮に40億円の時価総額の状態で上場したとしたら、株価が下がった瞬間に廃止基準に引っかかることになってしまいます。

経営者の保有株数を減らせばまだ楽になりますが、買収のリスクが高まることは避けられません。最初から保有株数を減らしたいと考える経営者はほとんどいませんから、そう考えると上場のハードルはぐっと上がることになるわけです。

ちなみに、すでに上場している会社については経過措置が設けられているので、ここまで厳しくはありません。ただ、新規上場は相当ハードルが上がります。プライム市場になると、流通株式時価総額の条件は100億円ですから。

―今まではギリギリの条件で上場できていたのが、今後は難しくなるということですね。

脇本:そうなります。もう一つ、従来であれば、上場している企業が基準を満たさなくなった場合、その下の市場に落ちるのは比較的簡単でした。しかし再編後は、市場を落ちるときにも新規上場と同じ審査が求められることになりました。

長年上場し続けている会社の中には、緩んでしまって下の市場でさえ基準を満たさないケースも多いはずです。そうなると、もう非上場株式会社になるしか選択肢は残されていないわけです。

―新規上場する企業への基準を厳しくし、時間をかけて上場基準を満たす良質な会社だけを残していく。東証はその方向性で進んでいくということですね。

※流通株式・・・上場有価証券のうち、大株主及び役員等の所有する有価証券や上場会社が所有する自己株式など、その所有が固定的でほとんど流通可能性が認められない株式を除いた有価証券のこと。ー用語集/日本取引所グループ

東証再編により、東京プロマーケットに注目が集まっている

脇本:再編後に上場基準が厳しくなるとすると、新たな市場(プライム・スタンダード・グロース)と未上場株式会社との差が今以上に開くことが予想されます。

東証上場会社と未上場株式会社との間を埋める市場があればよいのですが、それが日本にはありません。地方取引所はある意味その役割を担ってはいますが、地方に行くことに抵抗を感じる会社も多い。そこを埋める存在になり得るのが東京プロマーケットです。

東京プロマーケットに上場する企業も、東証の他の市場に上場する企業と同じく上場審査を受けます。J-Adviserが上場後もサポートしたり特定投資家対象の市場だったりと、東京プロマーケットは他の東証市場とはかなり毛色が違います。しかし、情報公開審査を受けて情報を開示しているという信用性の高さに変わりはありません。

それに加えて、今は投資家の目も東京プロマーケットに向いてきています。

―東京プロマーケットは流動性がないと言われていますが、そうではないということでしょうか。

脇本:ベンチャーキャピタルなどの投資会社の多くは上場企業に投資をするわけですが、未上場株式会社にも投資をしますよね。だとしたら、東京プロマーケットに上場している企業に投資してもいいわけです。その動きが必ず出てくるはずです。

東京プロマーケットは、「一般投資家は投資できない」というクローズ性を保ちつつも投資という部分で他の東証市場と肩を並べる市場になる可能性が出てくるでしょう。今後は、さまざまな意味において「東京プロマーケットは非常に使える市場である」という認識が高まっていくと私は予想しています。

―東京プロマーケットは、今までは「別の市場に行くための足がかりとして信用を得るための場所」という位置づけでした。それが、今後はさらに「投資家からの資金調達が得られる」という要素が加わるわけですね。非常にクローズな市場というイメージがありましたが、そのイメージも今後は払拭されると。

脇本:はい。ただ、東京プロマーケットは株主数の基準や流通株式時価総額といった基準は求められません。これは今後も変わりませんから、今まで通り投資を受け入れたくない人にとっても、東京プロマーケットは最適な市場であることに変わりはないんです。

二極化が進む東京プロマーケット。今後の展開は

―東証再編の動きを受けて、東京プロマーケットにも変化が出ていますか?

脇本:元々東京プロマーケットには、これまで全く上場の準備をしてこなかった企業も多かったのですが、今はこれにプラスして、マザーズに上場直前まで行ったような、上場の準備ができあがっている企業の参入が増えています。

―今後、東証市場はどのように展開していくでしょうか。

脇本:まず一般市場に関しては、上場廃止基準に引っかかる企業が株式市場に生き残るための動きが活発化すると思います。余裕で今の市場に残れる企業以外は全て、何かしら対策が必要になるでしょう。それに伴って士業の方々の活躍の場も増えるのではないでしょうか。

東京プロマーケットに関しては、上場の準備が整った会社が増えることによって、今以上に東京プロマーケットから上の市場に上がっていく企業が増えていくと思われます。
そうすれば、「東京プロマーケットに上場しているうちに投資をしておいて、その企業がスタンダードやグロースに上場したら売り抜けよう」と考える投資家も出てくるでしょう。結果として、東京プロマーケットの流動性はさらに高まると思います。

―東京プロマーケットに求められる役割も大きくなっていきそうですね。今回は、ありがとうございました。

脇本 源一氏

フィリップ証券株式会社
常務執行役員

大和証券および楽天証券で17年間公開引受実務に携わるとともに、日本国内およびシンガポールのベンチャー企業で上場実務に携わる。シンガポールCatalist市場における上場実務経験を生かし、現在フィリップ証券で東京プロ市場を中心としたCorporate Finance業務を行なっている。

大和証券および楽天証券で17年間公開引受実務に携わるとともに、日本国内およびシンガポールのベンチャー企業で上場実務に携わる。シンガポールCatalist市場における上場実務経験を生かし、現在フィリップ証券で東京プロ市場を中心としたCorporate Finance業務を行なっている。

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